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急がれる患者参画の仕組み構築

2020年12月11日 (金)

 医薬品開発の各段階に患者・市民の意見や経験を反映させる取り組み(PPI)が、日本でも注目を集めるようになってきた。先行する欧米に比べて日本は大きく遅れをとっているが、近年は関係組織からの報告書やガイドブックの発行が相次ぐなど、活動本格化に向けた気運は高まっている。今の勢いを維持し、関係者間の討議や取り組みを活性化させて、日本でも患者や市民の声を反映する仕組みをいち早く構築する必要があるだろう。

 PPIは、治療薬の早期実用化を求めるエイズ患者の怒りの声がきっかけになって、欧米を中心に始まった。

 社会的基盤が段階的に整備され、米国では2012年に「FDA安全及びイノベーション法」が成立。患者の経験や声を医薬品開発や承認審査に取り入れることを目指した施策「患者にフォーカスした医薬品開発」(PFDD)が動き始めた。その一環として患者や企業、規制当局等の関係者が参加する会合を疾患別に開催している。

 現在は、患者からの情報収集方法などを解説した計4章のPFDDガイダンスの作成が進んでおり、今年6月には第1章の最終版が示された。

 欧州では、欧州医薬品庁(EMA)と患者団体が意見交換する組織として06年にPCWPが発足。医薬品の開発、承認審査、市販後の全過程で、委員会や会議体への患者参画が実現しており、EMAの活動に患者の声を取り入れる仕組みが整っている。

 そもそも患者参画はなぜ必要なのか。患者や市民の声を聞き、当事者にしか分からない多角的な視点を取り入れることで、より良い医薬品開発が実現する。患者の理解が深まることで、治験時の患者の組み入れと参加継続にもつながる。患者を対等なパートナーと位置付け、同じ方向を向いて医薬品開発に取り組むという概念が根底にある。

 一方、日本においても近年は、日本製薬工業協会が18年6月以降関連する報告書やガイドブックを発行し、日本医療研究開発機構が19年4月に「患者・市民参画(PPI)ガイドブック」を発行するなど動きが活発になってきた。

 19年7月には、患者や市民、アカデミア、製薬業界関係者が協議する場として「患者・市民参画コンソーシアム」が立ち上がった。

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)でも取り組みが進んでいる。PMDAの業務における患者参画の推進に当たって参照すべき活動指針を盛り込んだガイダンスを、来年作成する計画だ。

 ガイダンスには、患者の声を聞く意見交換会の実施や、開発・審査等の各段階に患者の声を活用するインフラ整備のあり方などが盛り込まれる見通しである。

 欧米に遅れを取る日本だが、ここにきて一気に環境の整備が進みそうだ。合わせて、関係者の認知度向上にも取り組む必要があるだろう。



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